課題設定会議(仮称)の構想

類似機関(参考資料)

●(欧州における注目事例):社会技術研究システム作成の「欧州における社会技術分野の取り組み調査結果」から引用

2. 科学への市民参加(public participation)、統治行為への科学の活用(science and governance)といった科学技術と社会との関係強化のための社会技術的取組みは、欧州域内のホットイシューとなっている。(中略)

①サイエンスショップ [オランダ]

   科学の市民相談所、コミュニティべース・リサーチ(CBR)の実施機関という機能を極めて低コストで達成している点で高く評価されている。また、大学院生のカリキュラムにCBR研究への参加が組み込まれており、社会ニーズ志向の研究者を養成するという教育効果も評価されている。

②市民参加型技術評価(pTA) [デンマーク]

   社会生活に密接に関連した複雑な技術的問題(ゲノム研究と生命倫理、遺伝子組換え植物の安全性等)について社会的な観点からの評価を試みるもの。例えば、デンマークの「コンセンサス会議」は、その会議の結論が議会に報告され、政策決定過程に一定の影響を与えていると言われている。

③トランスディシプリナリティ(trans-disciplinarity) [スイス]

   社会ニーズ対応型研究開発、ないし規制科学(regulatory science)のようなscience and governmentのためのアプローチとして注目される考え方。スイス科学財団の定義によれば、学際的(inter-disciplinary)な研究体制に加えて、非専門家を研究体制に加えたものをトランスディシプリナリティと呼んでいる。非専門家としては企業を入れる場合もあり、市民団体を入れる場合もある。その他、サイエンスコミュニケーションやCBR研究への少額の賞金(Award)制度が欧州中で比較的広範に行われており、注目事例の一つとして挙げられる。

●日本では:社会技術研究開発の進め方に関する研究会の「社会技術の研究開発の進め方について」から引用

   20世紀は、科学技術の発達により、人類の福祉と生活の利便性が向上した反面、負の側面として、環境劣化、社会の脆弱制の増大等の深刻な問題も生じた。また、昨年は、我が国の科学技術力の信頼を揺るがすような重大事故等が重なり、科学技術プロジェクトの進め方や社会との関係、危機管理のあり方などについて様々な問題提起がなされてきている。

 ■こうした問題を踏まえ、本研究会においては、「自然科学と人文・社会科学の複数領域の検知を統合して新たな社会システムを構築していくための技術」を「社会技術」としてとらえ、その研究開発の方向及び推進方策について、本年4月から6回にわたって検討を進めた。

■その結果、「平成13年度科学技術振興に関する重点指針」(平成12年6月29日科学技術会議政策委員会決定)における自然科学と人文・社会科学との統合に係る取り組みの具体化の一つとして、「社会技術研究プロジェクト」に早急に取り組む必要がある旨の中間提言を8月に取りまとめ、今般、その後の議論を含め、社会技術の研究開発の進め方全般について整理し、取りまとめた。

(中略)

イ.社会に開かれた研究推進

■社会の問題の解決を目指す技術であることから、研究課題は、社会への適用を前提とした具体的な目的を持つ技術の開発を目標とするものである必要がある。したがって、研究推進に当たっては、技術の恩恵を被る個人、集合体、社会とのリエゾンを絶えず考える必要があり、このコミュニケーションの必要性が従来の自己完結型の閉じられた科学技術との相違点である。

■このため、研究計画の設定段階から、具体的な成果とその社会への還元の意図を徹底するとともに、プロジェクトの実施に当たっては、常に成果のユーザーを念頭に置き、ユーザー自身の提案に開かれたものとすることが重要である。即ち、社会に進んで手を伸ばし、情報を取り込み成果を渡すこと(アウトリーチ)を重視し、何らかの形で初期段階からユーザーを巻き込み、意見を聴いたり、研究成果がある程度出てきた時点で、その成果を使ってもらい、研究にフィードバックできるような仕掛けを工夫する等、常にユーザーに鋭敏であることが重要である。さらに、場所や時間を変化させ試行錯誤を繰り返しながら、研究計画、方法、評価、体制等全てについて柔軟でオープン・エンドな研究開発を行っていくことが重要であり、これらの過程を通じて、社会に役立つ目に見える技術の開発に絞り込まれていくものと考える。